運営指導(旧実地指導)とは?監査の違いを完全解説|対応のポイントまで徹底ガイド

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はじめに

障害福祉サービス事業所の経営者の皆さん、「運営指導(実地指導)」という言葉を聞くだけでドキドキしませんか?でも大丈夫です。この記事を読めば、運営指導の目的や流れ、準備のポイントまでしっかり理解できます。

さらに、2024年度から「運営指導」に名称が変更になったことも踏まえて、最新の情報をお届けします。

2025年4月からの運営指導の強化を厚生労働省・こども家庭庁が明言しています。日頃からの整備が今後ますます重要になってきます。

「運営指導が怖い」と感じるのはなぜ?

運営指導は多くの事業者にとって大きなストレスの種です。

それは「何をチェックされるのかわからない」「書類の準備が間に合うか不安」「指摘を受けたらどうしよう」といった漠然とした不安があるからです。

しかし、モノは考えようです。運営指導をきっかけに、書類を整備し・正しい運営を再確認する、つまり事業所の質を高めるための良い機会と考えましょう。

運営指導に向き合う正しい姿勢とは

運営指導の本来の目的は、「利用者により良いサービスを提供する、そんな事業所運営ができているか?」の確認です。

指定権者(都道府県や市区町村)は、決して事業所の足を引っ張るために運営指導をしているわけではありません。

この視点を持つことで、実地指導への向き合い方も変わってきます。

2024年度からの重要な変更点

2024年4月から、これまでの「実地指導」が「運営指導」に名称変更されました。

これは単なる名称変更ではなく、より良い事業所運営のための「支援」という性格が強まったことを意味します。ただし、確認される内容や基準は基本的に変わっていないので、これまでの実地指導の知識や経験は十分に活かすことができます。

運営指導(実地指導)の基本

多くの事業所が「運営指導」と「監査」を混同してしまい、必要以上に身構えてしまうことがあります。ここでは、運営指導の基本的な内容から、監査との違いまでわかりやすく解説します。知識を整理して、落ち着いて準備を進めましょう。

運営指導って何をするの?

実地指導は、指定権者(都道府県や市区町村)が事業所を訪問し、適切な運営ができているかを確認する場です。

主に書類の確認や職員へのヒアリングが行われ、必要に応じて具体的なアドバイスが実施されます。決して事業所を追い込むためのものではなく、より良いサービス提供のための「健康診断」のようなものと考えましょう。

運営指導の対象となる主な障がい福祉サービス

  • 放課後等デイサービス
  • 児童発達支援
  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型
  • 就労移行支援
  • グループホーム(共同生活援助) など

どのくらいの頻度で実施されるの?

基本的な実施頻度は以下の通りです。

  • 新規指定から1年以内に1回目
  • その後は概ね3年に1回
  • 運営に不安がある場合はより頻繁に実施

ただし、地域の事業所数や指定権者の体制によって、この間隔は変動することがあります。

運営指導と監査はどう違うの?

運営指導と監査とは何が違うんですか?とよく質問されますが、この2つはまったく異なるものです。

運営指導は基本的にはあくまで指導に留まります。ソフトなイメージです。かたや監査には強制力があります。ハードなイメージですね。この点が最も大きな違いです。

最初は運営指導で事業所に入ったが、違反や不正等の疑いがあった場合は、途中で監査に切り替えて事実確認をおこなうケースもあります。

このように両者の違いを明確に理解しておきましょう。

運営指導:

  • 全ての事業所が対象
  • 日常的な運営状況の確認が目的
  • 基本的に事前に通知あり
  • 主に助言・指導が中心

監査:

  • 重大な違反や不正が疑われる事業所が対象
  • 違反・不正の事実確認が目的
  • 原則として抜き打ちで実施
  • 指定取消しなど行政処分につながる可能性が高い

運営指導のプロセス

運営指導は「通知の受領」から「結果報告」まで、いくつかの重要なステップがあります。それぞれの段階で必要な対応を知っておくことで、慌てることなく準備を進めることができます。

ここでは、事業者として押さえておくべき一連の流れを解説します。

通知から準備開始まで

運営指導の通知は、通常1ヶ月前までに届きます。通知を受け取ったら、まずは以下の3つの確認を行いましょう。

  • 実施日時と所要時間の確認
  • 事前提出書類の締切日の確認
  • 当日必要な書類リストの確認

特に重要なのは、通知を受け取ったらすぐに準備チームを結成することです。一人で抱え込まず、職員と協力して進めましょう。

事前準備で必要な対応

効率的な準備のために、以下の手順で進めることをおすすめします。

  1. 提出書類の一覧表を作成
  2. 担当者を決めて書類を収集
  3. 書類の不備や漏れをチェック
  4. 期限に余裕を持って提出

準備の際は「なぜその書類が必要なのか」を考えながら確認することで、より効果的な準備ができます。

当日の流れと対応のポイント

運営指導当日は、通常以下のような流れで進みます。

  • 挨拶・職員紹介(10分程度)
  • 現場確認(30分程度)
  • 書類確認(2~3時間)
  • (場合によって)職員ヒアリング(30分程度)
  • 講評・助言(30分程度)

当日は慌てず、質問には正直に答えることが重要です。不明な点は「確認してから回答させていただきます」と伝えるのがベストです。

結果通知への対応方法

運営指導後の対応も重要です。

  • 口頭指摘→その場でメモを取り、すぐに改善に着手
  • 文書指摘→通常1~2ヶ月以内に改善報告書の提出が必要
  • 助言事項→できるだけ早く改善を検討

改善報告は必ず期限内に行い、同じ指摘を受けないよう、再発防止の仕組みづくりまで行うことがポイントです。

運営指導でチェックされる重要項目

運営指導では、事業所の運営全般にわたって様々な項目がチェックされます。

しかし、すべての項目を同じように確認されるわけではありません。

ここでは特に重点的にチェックされる項目を、実際の指摘事例と共に解説します。これらの項目を押さえておけば、自信を持って実地指導に臨むことができます。

人員関連の重要チェック項目

人員配置は特に厳しくチェックされる項目の一つです:

  • 必要な資格者の配置 → 資格証の原本確認を必ず実施 → 資格の有効期限の確認も忘れずに
  • 人員基準の遵守 → 勤務実績表と実際の勤務状況の整合性 → 常勤換算での必要数の確保
  • 研修実施状況 → 必須研修(虐待防止・感染症対策など)の実施記録 → 参加できなかった職員へのフォロー方法

運営関連の重要確認事項

運営面では特に以下の項目に注目が集まります。

  • 重要事項説明書 → 料金や苦情窓口の記載は最新か → 運営規程との整合性は取れているか
  • 各種マニュアルの整備 → 事故対応・感染症対策・虐待防止 → 定期的な見直しと更新日の記録
  • 防災・安全対策 → 避難訓練の実施記録 → 非常災害対策計画の策定

サービス提供に関する確認ポイント

サービスの質に直結する以下の項目は特に重要です。

  • 個別支援計画 → アセスメントから評価までの一連の流れ → 利用者・家族への説明と同意の取得
  • 記録の整備 → サービス提供記録の適切な保管 → 日々の支援内容の具体的な記載
  • 苦情・要望への対応 → 受付から解決までの記録 → 再発防止策の検討と実施

請求関連の重要事項

給付費の請求に関する以下の項目は、特に慎重な確認が必要です:

  • 加算の算定要件 → 必要な職員配置や研修実施の証明 → 算定根拠となる記録の保管
  • 請求の根拠資料 → サービス提供実績記録との整合性 → 利用者確認印の漏れがないか

運営指導で確認される主な書類一覧

運営指導の成否は、必要な書類がきちんと整備されているかどうかで大きく変わってきます。

でも「どの書類を、どのように準備すればいいの?」と悩む方も多いはず。ここでは、必要な書類とその準備方法について、実践的なポイントをご紹介します。

必須書類の確認と準備

以下の書類は、必ず準備が必要です。

【利用者関係】

  • 重要事項説明書 → 最新版であることを確認 → 運営規程と内容の整合性チェック
  • 契約書類一式 → 契約書の署名・押印漏れの確認 → 受給者証の写しとの照合
  • 個別支援計画 → アセスメントから評価までの一連の書類 → 本人・家族の同意印の確認

【職員関係】

  • 雇用契約書
  • 資格証の写し
  • 実務経験証明書
  • 勤務実績表
  • 研修記録

任意書類の整備ポイント

状況に応じて求められる書類です。

  • 各種委員会の議事録 → 開催頻度の確認 → 参加者の署名や記名
  • マニュアル類 → 定期的な更新日の記載 → 職員への周知記録
  • ヒヤリハット・事故報告書 → 発生から対応までの経過記録 → 再発防止策の検討内容

書類の保管・管理の重要ポイント

適切な書類管理のために意識したいポイントです。

  • 保管場所の明確化 → 誰でもすぐに探せる収納方法 → 個人情報の適切な管理
  • 保存期間の遵守 → 基本は5年間の保存 → 廃棄記録の作成
  • バックアップの作成 → 電子データの定期的な保存 → 紙媒体の複製保管

運営指導から監査に移行するケース

運営指導は通常、事業所の運営をより良くするための機会ですが、場合によっては監査に移行することがあります。

でも、どんなケースで監査になるのか知っておけば、そうならないための対策を立てることができます。ここでは、監査に移行する具体的なケースと、その予防策についてお伝えします。

監査に移行する具体的な事例

以下のような状況が確認された場合、監査に移行する可能性が高まります:

  • 人員基準違反 → 必要な資格者が不在 → 配置基準を大幅に下回る人員配置
  • 不適切な支援 → 虐待や身体拘束の疑い → 劣悪な環境での支援提供
  • 不正請求 → 架空請求や水増し請求 → 加算要件を満たさない状態での請求

行政処分の種類と内容

監査の結果、以下のような処分が行われる可能性があります:

  • 勧告 → 期限を定めて改善を求める → 従わない場合は公表される
  • 命令 → 勧告に従わない場合の措置 → 必ず公表される
  • 指定の効力停止 → 一定期間、新規利用者の受入停止 → 既存利用者へのサービスは継続可
  • 指定取消 → 最も重い処分 → 事業継続が不可能に

監査を防ぐための具体的な対策

日頃から以下の点に注意を払うことが重要です:

  • コンプライアンスの徹底 → 定期的な自主点検の実施 → 法令遵守責任者の設置
  • 記録の適切な管理 → 日々の支援記録の確実な作成 → 請求根拠資料の適切な保管
  • 職員教育の充実 → 定期的な研修の実施 → 事例検討会の開催

運営指導を成功させるためのポイント

運営指導は事前の準備が9割と言っても過言ではありません。

でも、何から手をつければいいのか迷ってしまいますよね。

ここでは、運営指導を成功に導くための具体的なポイントを、これまでの顧問先のお客様の運営指導に立ち会った経験をもとにご紹介します。

これらの対策を日常的に実践することで、突然の運営指導にも慌てることなく対応できます。

日常的な準備のポイント

普段から以下の取り組みを習慣化しましょう:

  • 書類の定期チェック → 毎月1回は重要書類を確認 → 不備があれば即座に修正
  • 職員との情報共有 → できれば週1回のミーティング実施 → 気づいた点の報告体制構築
  • 自主点検の実施 → 3ヶ月に1回は総点検を実施 → チェックリストを活用

よくある指摘事項と対策

過去の指摘事例から学ぶことで、同じ失敗を防げます。

  • 個別支援計画関連 → モニタリング期限切れに注意 → 利用者の同意日の記入漏れ防止
  • 加算の算定要件 → 毎月の要件確認を習慣化 → 根拠資料の確実な保管
  • マニュアルの更新 → 年1回は必ず見直し → 職員への周知記録を残す

まとめ

ここまで運営指導について詳しく解説してきました。「運営指導=怖いもの」というイメージを持っている方も多いかもしれません。でも実は、事業所の質を高める絶好の機会なんです。この記事のポイントを押さえて、ぜひ前向きに実地指導に臨んでください。

運営指導対策チェックリスト

すぐに取り組める対策をチェックリストにしました。

□ 書類の整備状況

  • 利用者関係の書類は完備されているか
  • 職員の資格証は最新のものか
  • 研修記録は適切に保管されているか

□ 運営体制の確認

  • 人員配置は基準を満たしているか
  • 各種マニュアルは更新されているか
  • 防災対策は十分か

□ サービス提供の質

  • 個別支援計画は適切に作成されているか
  • 支援記録は毎日つけられているか
  • 苦情対応の仕組みは機能しているか

継続的な質の向上のために

運営指導を一時的なイベントとして捉えるのではなく、以下の視点で継続的な改善を心がけましょう。

  • PDCAサイクルの実践 → 計画的な自主点検の実施 → 改善点の洗い出しと対策 → 効果の確認と見直し
  • 職員全員での取り組み → 定期的な勉強会の開催 → 気づきの共有 → 改善提案の促進

さいごに

運営指導は決して恐れるものではありません。むしろ、事業所の質を高める良いチャンスと捉えましょう。日々の積み重ねが、必ず運営指導当日の自信につながります。この記事が皆さんの事業所運営の一助となれば幸いです。

ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。より良い支援のために、一緒に頑張っていきましょう。

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