データ結果から分析。放課後等デイサービス・児童発達支援開業の失敗原因と対策

はじめに
放課後等デイサービス・児童発達支援を始めようと考えている皆さんへ
近年、放課後等デイサービス・児童発達支援の需要は高まっていますが、同時に運営の難しさも指摘されています。2022年2月発表の帝国データバンクの調査では、開業後に失敗するケースが増えていることが分かりました。
主な倒産原因は4つに分けられ、帝国データバンクの報告によると、以下となります。
- 利用者の低迷(全体の34.5%)
- 法令違反(全体の31.0%)
- 職員確保難(全体の20.7%)
- 経営内部の不備(全体の13.8%)
この4つの倒産原因は日頃、顧問先の事業所様を通じて、わたしも実感として納得できる面が多いです。しかし、これは準備をしっかりと行えば防ぐことができる問題でもあります。
この記事では、この調査データと弊事務所の顧問先のお客様の事例をもとに、失敗を防ぎ、長く続けられる放課後等デイサービス・児童発達支援を作るためのポイントをお伝えします。ぜひご参考になさってください。
失敗の主な原因と具体的な対策
1. 利用者の低迷(全体の34.5%)
利用者が集まらないことは、最も多い失敗の原因となっています。これには主に次のような理由が考えられます。
まず、地域のニーズと提供するサービスが合っていないことです。子どもたちや保護者の方々が求めているものと、実際に提供できるサービスの間にずれがあると、継続的な利用につながりません。
次に、効果的な告知・集客戦略の不足です。放課後等デイサービス・児童発達支援の存在自体を地域に十分に周知できていない、あるいは施設の特徴や強みを効果的に発信できていないケースが多く見られます。特に開設初期は、認知度の低さが利用者確保の大きな壁となります。
さらに、地域との連携が不足していることです。学校や福祉機関との良好な関係づくりができていないと、新しい利用者の紹介を受けることが難しくなります。
対策として以下の取り組みが重要です:
開業前の入念な準備
- 地域の特性やニーズを詳しく調査し、それに合わせたサービスを計画
- 競合施設の分析と差別化ポイントの明確化
- 開業前からの認知度向上施策の実施
効果的な広報・集客活動
- SEO対策を施したホームページの作成と運用
- SNSを活用した施設の活動紹介と情報発信
- オンライン相談会や施設見学会の定期開催
地域との関係構築
- 特別支援学校や医療機関への定期的な訪問と情報提供
- 地域の福祉イベントへの積極的な参加
- 保護者向けセミナーや勉強会の開催
- 地域の子育て支援ネットワークへの参画
これらの施策を組み合わせることで、開業初期の利用者確保の課題を克服し、安定的な運営基盤を構築することが可能となります。特に重要なのは、開業前から計画的に認知度向上に取り組み、開業時には一定数の利用希望者を確保しておくことです。
また、既存の利用者からの口コミは非常に効果的な集客手段となります。質の高いサービスを提供し、利用者満足度を高めることで、自然な形での利用者増加も期待できます。定期的に保護者アンケートを実施し、サービスの改善につなげることも重要です。
2. 法令違反(全体の31.0%)
法令違反による失敗も多く見られます。具体的にはサービス報酬の水増し請求等により、行政処分を受けたことによる倒産です。これは単なる知識不足だけでなく、運営の余裕がなくなることで起きやすい問題です。
特に気をつけたい点は、職員配置基準を守ることです。資格を持つ職員さんが必要な人数いない状態でサービスを提供すると、重大な違反となります。また、サービスの提供記録や請求の手続きにも正確さが求められます。
これを防ぐには、以下の取り組みが効果的です。
- 開業前に関係する法律や規則を十分に学ぶ
- 分からないことは行政や専門家に積極的に相談する
- 定期的な自己点検の仕組みを作る
- 職員全員で法令遵守の意識を共有する
3. 職員確保難(全体の20.7%)
人材確保の問題は、サービスの質に直接影響する重要な課題です。特に資格を持った職員の確保は、開業時から継続的な課題となります。
この問題に対しては、職場環境の整備が重要です。具体的には:
仕事のやりがいを感じられる環境作り
- 支援プログラムの充実
- 研修制度の整備
- キャリアアップの機会提供
待遇面での工夫
- 適切な給与設定
- 休暇が取りやすい勤務体制
- 福利厚生の充実
などが挙げられます。
4. 経営内部の不備(全体の13.8%)
経営の基本的な部分で問題を抱えるケースも少なくありません。特に開業後の資金繰りや、業務の効率化につまずくことが多いようです。
安定した運営のために必要な取り組みとしては:
経営面での準備
- 収支計画の定期的な見直し
- 経営アドバイザーとの相談体制づくり
- 運転資金の適切な確保
業務の効率化
- 必要な書類や記録の整理方法の確立
- 職員間の情報共有の仕組みづくり
- 日々の業務の標準化
などが挙げられます。
成功している放課後等デイサービスの特徴
1. 特色ある療育プログラム
利用者が減る(34.5%)のを防ぐため、子どもたちが楽しく通える特色あるプログラムを用意しましょう。以下は成功している事例の一部です。
運動を取り入れた療育の例
- 体を使った遊びを通して、楽しく運動能力を伸ばす
- 子どもの成長に合わせた運動あそびの提供
- みんなで体を動かして、友だちと仲良くなる
- 定期的に成長を確認して、保護者の方に伝える
タブレットやパソコンを使った学習支援の例
- 一人ひとりの学習の進み具合を記録できるタブレットの活用
- 子どもが興味を持って取り組める教材の使用
- 毎日の予定を分かりやすく示すアプリの使用
- 連絡帳アプリで保護者との やりとりをスムーズに
その他の特色ある療育の例
- 音楽を使った therapy(リトミックなど)
- アートや創作活動を中心にした プログラム
- 農業体験や自然体験を取り入れた活動
- 調理活動を通じた生活スキルの習得
などが挙げられます。
2. ホームページ、SNS等を使った利用者の積極的な誘致
利用者確保のための効果的な情報発信戦略を実施しましょう。
デジタルマーケティングの活用
- 検索エンジン最適化(SEO)を意識したホームページ作成
- 施設での活動の様子を定期的にSNSで発信
- オンライン見学会や相談会の実施
- 地域の子育て情報サイトへの掲載
地域連携の強化
- 特別支援学校や福祉機関との定期的な情報交換会の開催
- 地域の子育てイベントへの参加
- 医療機関や療育機関との連携体制の構築
- 保護者向け勉強会やワークショップの開催
特に、ホームページやSNS等のデジタルマーケティングの活用はとても効果的です。ぜひ、積極的に取り組むことをお勧めしています。
正しいやり方を実践すれば、驚くほど集客に効果が出ます。この辺りのアドバイスは当事務所が大変得意とするところです。ぜひお気軽にご相談ください。
3. 離職率を下げる対策
職員確保難(20.7%)に対応するため、以下のような取り組みが一例として挙げられます。
働きやすい職場環境の整備
- 有給休暇取得率向上のための複数担当制の導入
- 残業削減のための業務効率化システムの活用
- 産休・育休後の復帰支援プログラムの整備
- メンタルヘルスケアの充実
キャリア開発支援
- 資格取得支援制度の整備(費用補助、試験休暇等)
- 外部研修への参加機会の提供
- 経験に応じた段階的な役割付与
- 定期的なキャリア面談の実施

とは言っても、この人材確保は、どの事業所さんも頭を悩ましているところです。。。
4. 法令違反を防ぐための外部専門家の活用
法令違反(31.0%)を防止するため、専門家との連携体制を構築することをお勧めします。
外部専門家との連携体制
- 社会保険労務士による労務管理チェック(月1回)
- 行政書士による法令遵守状況の定期監査(四半期ごと)
- 税理士による経理処理の確認(月次決算時) など
コンプライアンス体制の強化
- マニュアルの定期的な更新と周知
- 職員向けコンプライアンス研修の実施
- インシデント報告システムの整備
- 内部通報制度の確立



法令違反を未然に防ぐため、当事務所では顧問契約のサービスを実施しています。お気軽にお問い合わせください。
5. 成功している事業所、特徴のまとめ
これらの特徴は、単独ではなく相互に関連し合って効果を発揮します。例えば、ICTの活用は業務効率化による職員の負担軽減にもつながり、SNSでの情報発信は新規利用者の獲得だけでなく、求人にも良い影響を与えます。
成功している事業所では、これらの要素を計画的に導入し、定期的な見直しと改善を行っています。
実践的な開業準備のステップ
1. 開業前の準備(3~6ヶ月前)
入念な事前準備が成功への近道です。以下の順序で準備を進めましょう。
地域のニーズ調査
- 対象となる地域の特性把握
- 既存施設(ライバル事業者)の状況確認
- 地域の支援学校や関係機関への聞き取り
人材確保と育成計画の作成
- 必要な資格保持者の採用計画
- 研修プログラムの準備
- 勤務シフトの設計
設備・環境の整備
- 安全で使いやすい空間づくり
- 必要な設備・備品の選定
- 緊急時対応の体制整備
2. 開業直前の準備(1~3ヶ月前)
いよいよ開業が近づいてきたら、以下の点に注力します。
サービス内容の具体化
- 支援プログラムの詳細な計画作成
- 1日のスケジュール設定
- 個別支援計画の作成手順確認
地域への周知活動
- 関係機関への挨拶回り
- 説明会や見学会の開催
- ホームページ、SNS等デジタルマーケティングの活用
- 案内資料の配布
3. 開業後の運営管理
開業後は、定期的な振り返りと改善が重要です。
サービスの質の維持・向上
- 支援内容の定期的な見直し
- 職員研修の実施
- 保護者からのフィードバック収集
安定した経営基盤の確立
- 収支状況の定期確認
- 加算の適切な活用
- 運営効率の改善
まとめ
放課後等デイサービス・児童発達支援の運営は、やりがいのある仕事です。しかし、その分だけ責任も重く、慎重な準備と運営が必要となります。
この記事でご紹介した内容を参考に、しっかりとした準備を行い、子どもたちの成長を支える素晴らしい場所づくりを目指してください。
開業に向けて不安な点がある方は、お気軽に当事務所への相談をご検討ください。皆さまの成功をサポートさせていただきます。