放課後等デイサービス・児童発達支援の開業資金・費用の完全ガイド

読みたい場所にジャンプ

はじめに:開業準備と資金計画の重要性

結論から言いますと、放課後等デイサービス・児童発達支援の開業には、総額1200万円前後が必要となります。この金額は、事業の安定運営を実現するための必要最低限の金額と言えます。余裕をもった経営を目指すのであれば、できれば1500万円程度の資金が欲しいところです。

何より重要なのは、十分な運転資金の確保です。なぜなら、この事業の特色上、事業開始後すぐには収入が見込めず、安定した利用者の確保までには一定の期間をかかるためです。

開業前の主な資金配分

開業費用には、大きく分けて、初期費用と運転資金の2つがあります。その内訳ですが、おおよそ以下の割合です。

  • 初期費用:500~800万円
  • 運転資金:600~900万円

まずは、ざっくりと、初期費用と運転資金の内訳を表形式で挙げてみます。

初期費用

法人設立費用25万円
賃貸借契約時の初期費用100万円
内装工事費用200万円
車両100万円
備品・設備100万円
人件費60万円
その他25万円
合計630万円

運転資金

人件費480万円
家賃120万円
光熱費等60万円
その他18万円
合計678万円

障がい児通所給付金は利用月から2ヶ月後の入金となるため、最低でも6ヶ月分の運転資金確保が必要不可欠だと考えます。

代表:鈴木

ここでは挙げませんでしたが、開業後の予期せぬ支出や利用者確保の遅れに備え、予備費として総額の15%程度を追加で確保することを当事務所ではおススメしてします。

1. 初期費用の詳細

1.1 法人設立(25万円)

株式会社設立の主な費用:

  • 定款認証:5万円
  • 登録免許税:15万円
  • その他諸経費:5万円

法人形態の選択は事業の将来を左右する重要な決定です。株式会社は初期費用が比較的高額ですが、以下の利点があります:

  • 社会的信用が得やすい
  • 事業拡大時の対応が柔軟
  • 採用活動がやりやすい

合同会社やNPO法人は設立費用を抑えられますが、運営面での制約が多くなる可能性があります。

代表:鈴木

個人的には、③が一番のメリットかと思います。これまでのお客様の事例を見ていて、合同会社は世間一般的に認知度が低いので、求人面でデメリットが多いと感じることがあります。

1.2 物件関連(200~300万円)

賃貸契約時の初期費用(100万円)

ここでは、家賃を15万円を想定して計上してみました。

  • 敷金(家賃3ヶ月分):45万円
  • 礼金:15万円(家賃1ヶ月分)
  • 仲介手数料:15万円(家賃1ヶ月分)
  • 前払い家賃:30万円(家賃2ヶ月分)

前払い家賃が発生することを念頭においてください。

といいますのも、この事業は、許可申請(正しくは指定申請といいますが)から、実際に許可が下りる(指定がおりる)まで2ヶ月ほどかかります。

指定申請の段階で建物の賃貸借契約は済ませておく必要があるため、どうしても前払い家賃(カラ家賃)が2ヶ月分は発生することになります。

なお、実際の指定申請の流れを詳しく知りたい方は、こちらをご参考になさってください。愛知県を例にして解説しています。

そして、物件選定において特に重要なのは、利用者の送迎のしやすさと近隣住民への配慮です。
理想的な立地の条件として:

  • 主要道路からのアクセスが良好
  • 住宅密集地を避ける
  • 公共交通機関からの適度な距離
  • 駐車場の確保が容易
  • 周辺に競合施設が少ない

などが挙げられます。

また、昨今の求人難を考慮すると、スタッフの通勤の利便性もよく考えた上で物件を選定することをオススメします。

内装工事費用(200万円)

これは物件の状態により大きく異なります:

  • 居抜き物件:50~200万円
  • スケルトン物件:300~500万円

ここでは、居抜き物件を前提として、200万円を計上しました。

内装工事で特に注意が必要な点は、利用者の安全性と快適性です。以下の要素を重点的に検討するとよいでしょう。

防音・空調対策

  • 床材の選択(防音・衝撃吸収)
  • 壁材の選択(防音・耐久性)
  • 空調設備の適切な配置
  • 換気システムの整備

安全対策:

  • バリアフリー化
  • 避難経路の確保
  • 転倒防止措置
  • 指はさみ防止対策

内装については、ある程度費用をかけるべきだと考えています。

なぜなら、事業所を選ぶのはお子さんではなく、その保護者(特に母親)だからです。

「自分の子どもを通わせてもよい」と感じてもらうためには、あまりに貧相な施設・清潔感の無い施設では、親目線で見学の段階で候補から外されてしまいます。

代表:鈴木

内装業者さんにお困りの際は、ご相談下さい。良心的で丁寧な仕事をしてくれる職人さんを、何社かご紹介いたします。

1.3 車両関連(100万円)

ここでは、中古車を想定して、100万円を計上しました。

送迎サービスは保護者のニーズもありますし、送迎加算も取得できますので、多くの事業所が実施しています。開業当初は1台でもよいですが、利用者が増えてくると送迎ルートの関係で2台必要となる場合が多いと思います。

新車導入のケース

(250~300万円/台)のメリット

  • 故障リスクが低い
  • 保証が充実
  • 利用者への安心感
  • 維持費が予測しやすい

中古車活用のケース

(50~200万円/台)のメリット:

  • 初期投資を抑制
  • 年式の古い車両は保険料が安い
  • 傷や汚れを気にせず使える

最近は、新車価格はかなり高騰してますし、納期の問題もあります。なので、中古車を活用することをオススメします。

1.4 備品・設備(100万円)

事務機器(50万円)

  • パソコン2台(30万円)
    • 請求業務専用機
    • 一般事務作業用機
  • 複合機(10万円)
  • その他事務用品(ロッカー、書庫など)(10万円)

訓練用具(20万円):

  • 学習教材(10万円)
    • 個別学習教材
    • グループ活動教材
  • 運動器具(5万円)
    • バランスボール
    • マット類
  • 感覚統合療育教具(5万円)

訓練機器については、各事業所で特色が出る部分です。今回は一応20万で計上しましたが、これより費用がかかる場合もあるでしょう。ただ、ここは他の事業所との差別化を図るところ。ある程度費用をかけて然るべきだと思います。

生活家電(30万円)

  • エアコン(20万円)
  • 冷蔵庫(5万円)
  • その他家電(5万円)

1.5 人件費(60万円)

賃貸借契約時の初期費用のところでも説明しましたが、この事業は、許可申請(正しくは指定申請といいますが)から、実際に許可が下りる(指定がおりる)まで2ヶ月ほどかかります。

指定申請から、実際に稼働するまでのこの2ヶ月間、開業準備スタッフとして、管理者兼児童発達支援管理責任者を1名、事前に雇い入れていると想定し、30万円(社会保険料や交通費込み)×2ヶ月分を計上しました。

ここまでが初期費用となります。続けて運転資金について見ていきましょう。

2. 運転資金の詳細管理

まず、以下にあげる人件費・家賃・光熱費等は、すべて6ヶ月分を計上しています。

運転資金の不足は即時の事業停止を意味します。ネット記事等では、3ヶ月ほどでも・・・という記事をみますが、元銀行員で融資業務に従事していた私からすると、3ヶ月では到底心許ないです。

最低でも6ヶ月分の運転資金を確保しておくことを強くオススメします。

2.1 人件費(480万円):6ヶ月分

人材は事業の質を決定する最重要要素です。

基本の人員体制である管理者兼児童発達支援管理責任者1名、保育士・児童指導員2名(常勤)でスタートと想定します。

管理者兼児童発達支援管理責任者(30万円:社会保険料・交通費等込み)

雇入れの際、以下の確認は必須です。本人の申告ではなく、必ず書類で確認するようにしてください。

  • 資格要件の確認
  • 実務経験の確認
  • 研修受講歴の確認

保育士・児童指導員(50万:25万円/人×2名)

こちらも雇入れの際、以下の確認は必須です。本人の申告ではなく、必ず書類で確認するようにしてください。また、児童指導員等加配加算に関係上、実務経験の確認は今まで以上に大切になってきます。

  • 資格要件の確認
  • 実務経験の確認

2.2 家賃(120万円):6ヶ月分

家賃(20万円/月):

  • 立地による変動を考慮
  • 駐車場代(5万円)を含む
  • 契約更新料の積立
  • 共益費の確認

2.3 光熱費等(60万円):6ヶ月分

光熱費(5万円):

  • ガソリン代(2台分)を含む
  • 季節変動の予測
  • 省エネ対策の実施
  • 設備の定期メンテナンス

通信費・営業費(5万円):

  • インターネット回線
  • 固定電話
  • FAX回線
  • モバイル通信
  • チラシ、HP維持費など

2.4 その他(18万円):6ヶ月分

消耗品(3万円):

  • 事務用品
  • 衛生用品
  • 清掃用品
  • 活動材料費

4. 事業成功のための重要ポイント

4.1 開業準備の徹底

この記事は放課後等デイサービス・児童発達支援の開業費用を特集した記事のため、「事業成功のための重要ポイント」について詳しくは触れませんが、以下に簡単に挙げておきます。

市場調査:

  • 地域の需要分析
  • 競合施設の調査
  • 利用者ニーズの把握
  • 支援学校との連携

サービス設計:

  • 特色ある活動内容
  • 送迎範囲の設定
  • 営業時間の検討
  • 休日対応の方針

4.2 人材確保と育成

採用戦略:

  • 早期からの求人活動
  • 複数の採用チャネル活用
  • 実務経験者の確保
  • 資格保有者の採用

育成体制:

  • 研修プログラムの整備
  • OJTの実施計画
  • 評価制度の構築
  • キャリアパスの提示

4.3 収支管理の徹底

定期的なチェック:

  • 月次決算の実施
  • キャッシュフロー管理
  • 予実管理の徹底
  • 経費の最適化

開業するにあたり、何に注意すべきか?詳しく解説していますので、こちらもご参考ください。

まとめ:成功への道筋

放課後等デイサービスの開業には、資金面での十分な準備と慎重な計画が不可欠です。特に以下の2点が重要となります:

  1. 運転資金の確保
  • 最低6ヶ月分の確保
  1. 人材の確保・育成
  • 早期からの採用活動
  • 充実した研修体制
  • 適切な労務管理

開業後6ヶ月間は赤字を想定し、7ヶ月目以降の黒字化を目指した計画的な運営が求められます。十分な準備期間を設け、着実な事業展開を進めることが、長期的な成功への近道となります。

読みたい場所にジャンプ