岐阜県で放課後等デイサービス・児童発達支援を開業(指定申請)するためのガイド

1. はじめに
放課後等デイサービスと児童発達支援は、障がいのあるお子さんの成長を支える大切なサービスです。
このガイドでは、これらのサービスを岐阜県で開業するために必要な手続きや基準について、分かりやすく説明します。
これから開業を考えている方々に、申請の流れや必要な書類、気をつけることなどをお伝えしていきますので、ぜひ、ご参考になさってください。
サービスには次の3つの形があります:
- 放課後等デイサービス
- 児童発達支援
- 多機能型(上記2つを組み合わせたもの)
放課後等デイサービスは、学校に通うお子さんに、放課後や長期休暇中に利用するサービスで、生活の力を伸ばすための支援を行うサービスです。
児童発達支援は、主に、就学前のお子さんが利用するサービスです。日常生活の基本的な動きや、集団生活に慣れるための支援を行います。多機能型は、この2つのサービスを1つの施設で行う形です。
2. 開業前に知っておきたいこと
基準について
岐阜県内で放課後等デイサービスや児童発達支援を始めるには、役所から許可を受けなければなりません(正しくは「指定を受ける」と表現します)。具体的には、大きく分けて3つの大切な基準をクリアする必要があります。
1. 人の配置の基準
支援の質を確保するため、必要な資格を持ったスタッフを適切な人数配置する必要があります:
- 施設の責任者(管理者)は常勤で1人以上
- 支援計画を作る専門職(児童発達支援管理責任者)も常勤で1人以上
- お子さんと直接関わる職員(保育士、児童指導員等)は、お子さん10人に対して2人以上必要
これらのスタッフは、それぞれ決められた資格や経験が必要です。
たとえば、児童発達支援管理責任者になるには、福祉の実務経験と専門の研修修了が必要です。
2. 施設の環境の基準
お子さんが安全に、そして快適に過ごせる環境を整える必要があります:
- 活動するための部屋(発達支援室):お子さん1人あたり2.47㎡以上
- 静かに話ができる相談室
- お子さんが使いやすいトイレと手洗い場
- 書類などを管理する事務室
- 災害時に備えた設備(消火器、避難経路など)
3. 運営の方法の基準
お子さんへの支援を適切に行うためのルールです:
- 個別支援計画の作成と定期的な見直し
- 支援内容の記録管理
- 非常災害時の対応方法
- 感染症予防の取り組み
- 安全管理の方法
- 苦情への対応の仕組み
- 秘密保持の取り決め
- 虐待防止の取り組み
これらの基準を満たしているかどうかは、岐阜県の担当者が書類と実地で確認します。
基準を満たしていると認められると、指定を受けることができます。
申請窓口について【重要】
岐阜県内での申請窓口は、事業所の所在地によって異なります:
岐阜市
岐阜市役所 福祉部福祉事務所障がい福祉課 指導係
場所:〒500-8701 岐阜市司町40番地1
電話:058-214-2136
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岐阜圏域(羽島市、各務原市、山県市、瑞穂市、本巣市、羽島郡(岐南町、笠松町)、本巣郡(北方町))
岐阜県 健康福祉部 岐阜地域福祉事務所 福祉課
場所:〒500-8384 岐阜県岐阜市薮田南5-14-53 OKBふれあい会館 第2棟 4階
電話:℡058-272-8287 FAX番号:058-278-3526
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岐阜圏域以外
岐阜県 健康福祉部 障害福祉課 事業所指導係
場所:〒500-8570 岐阜県岐阜市薮田南2-1-1 岐阜県庁 12階
電話:058-272-8302 FAX番号:058-278-2643
ホームページ
相談の進め方
事前相談
岐阜県では事前協議が必須となっています。
まずは電話で予約を取りましょう:
- 「放課後等デイサービス(または児童発達支援)の開業について相談したい」と伝えます
- 相談可能な日時を確認します
初回相談時の準備物:
岐阜市は、事前協議の段階で、下記の書類を持参するよう求めています。
- 事前協議書
- 管理者及び児童発達支援管理責任者の経歴書
- 管理者及び児童発達支援管理責任者の実務経験証明書
- 児童発達支援管理責任者の研修受講証明書
- 指定予定月の勤務形態一覧表
- 保育士、児童指導員等の資格者の証明書類
- 平面図
- 事業計画(任意形式)
岐阜市の場合、この事前協議の段階で、スタッフ全員の確保がなされているのが原則です。
また、事業計画書の提出も求められます。この事業計画書の提出は不要となった県も多いのですが、岐阜県内で開業する場合は作成が必須となっています。
3. 開業までの流れ
標準的なスケジュール
1. 最初の相談(事業開始予定月の3か月前の末日まで)
例)9/1に開業したいならば、6月末までに事前相談をすること
2. 書類作り(2~3週間)
- 各種申請書類の作成
- 写真等の準備
- 運営規程の作成
- スタッフの確保と証明書類の準備
3. 指定申請(開業予定の2ヶ月前の末日まで)
例)9/1に開業したいならば、7月31日までに指定申請が完了すること
- 申請書類の提出
- 申請後、必要に応じて差し替え、追加などの補正
5. 現地確認
- 部屋の広さは基準を満たしているか
- 必要な設備は整っているか
- 配置予定の従業者が指定申請書の記載通り存在しているか
- 安全対策は十分か
6. 指定通知(開業予定の前月末)
- 指定通知書が交付されます
- 事業者番号が付与されます
- 関係機関への届出準備を始めます
7. 指定(各月1日付けで指定)
8. 開業
- お子さんの受け入れ開始
- 個別支援計画の作成
- 各種記録の作成開始
4. 放課後等デイサービスを始める時の準備
必要な書類
申請に必要な主な書類は以下の通りです。
- 指定申請書
- 付表 指定に係る記載事項(サービスごと)
- 履歴事項証明書
- 建物の構造概要及び平面図
- 建物の周辺地図、写真、賃貸借契約書写し
- 設備・備品等一覧表
- 勤務体制・形態一覧表
- 管理者・児童発達支援管理責任者の経歴書
- 従事者の経歴書
- 研修修了証、資格証、実務経験証明書等
- 運営規程
- 苦情解決のため講ずる措置の概要
- 協力医療機関との契約関係書類
- 事業開始後1年間の収支予算書及び事業計画書
- 事務所位置図
- 誓約書
- 勤務形態一覧表
- 組織体系図
- 社会保険及び労働保険への加入状況にかかる確認票
- 体制届関係 障害児通所(入所)給付費等算定に係る体制等に関する届出書
- 申請者の定款
スタッフについて
放課後等デイサービスで必要なスタッフは以下の3つの役割です:
- 管理者(施設の責任者)
- 児童発達支援管理責任者
- 児童指導員または保育士
管理者は、施設全体を管理する人です。常勤で1人以上必要です。施設の運営に支障がなければ、他の仕事と兼ねることもできます。実際、児童発達支援管理責任者と兼務するケースが多いです。
児童発達支援管理責任者は、お子さん一人一人の支援計画を作る大切な役割です。この方も常勤で1人以上必要です。必要な研修を受けていることが条件になります。
現場の児童指導員・保育士等と兼務はできませんが、管理者と兼務することは可能です。
児童指導員または保育士は、実際にお子さんと関わる中心的なスタッフです。お子さん10人に対して2人以上必要で、その半分以上は常勤の人でなければいけません。
施設の環境づくり
施設には以下の設備が必要です:
- 活動する部屋(発達支援室)※指導訓練室から名称が変わりました
- 相談室
- 手洗い場とトイレ
- 事務室
- 防災のための設備
活動する部屋(発達支援室)は、岐阜県の場合、お子さん1人当たり2.47㎡以上の広さが必要です。たとえば、10人のお子さんを受け入れる場合は、最低限24.7㎡以上の広さが必要になります。
相談室は、周りの人に会話が聞こえないよう、プライバシーに配慮した作りにします。会話が外部に漏れないよう、適切な防音性能を備えた空間にする必要があります。
手洗い場とトイレは、利用者の親御さんがよくチェックするポイントです。お子さんが使いやすく、清潔な環境を整えることが重要です。費用はかかりますが、場合によっては、新調することを私はお勧めしています。
事務室は、日々の記録や重要書類の管理、職員の業務スペースとして活用されます。また、防災設備については、消防法に基づく必要な設備を整え、適切な避難経路を確保することが求められます。
これらの基準は、安全で質の高いサービスを提供するための最低限の要件です。特に、お子さんが日常的に使用する設備については、利用者の快適性を考慮した十分な検討と適切な投資が望ましいです。
5. 児童発達支援を始める時の準備
必要な書類
児童発達支援を始める時も、放課後等デイサービスとほぼ同じ書類が必要です。
スタッフについて
児童発達支援で必要なスタッフは、放課後等デイサービスと同じです。ただし、まだ小さいお子さんを支援するので、以下の点に気を付けましょう:
- 発達支援の知識や経験がある人が望ましい
- 保護者の方とよく話し合える人が必要
- お子さんの成長に合わせた支援ができる人が大切
施設・設備の基準
児童発達支援では、小さいお子さんが対象となるため、以下の点に特に注意が必要です:
- 活動スペースは床暖房など、床面の温度管理ができることが望ましい
- 手洗い場は小さいお子さんの身長に合わせた設置
- おむつ交換スペースの確保
- 午睡用のベッドや布団の準備
6. 多機能型として始める場合の準備
2つのサービスを一緒にする良いところ
2つのサービスを一緒に行う「多機能型」には、次のような良いところがあります:
- 建物を効率よく使える
- スタッフを融通し合える
- 兄弟で違うサービスを使う場合も同じ施設で対応できる
気を付けること
書類は基本的に2つのサービスそれぞれに必要です。ただし、同じような内容の書類は、まとめて1つにすることもできます。
スタッフについては、以下のような工夫ができます:
- 管理者は1人で両方のサービスを担当できる
- 児童発達支援管理責任者も1人で両方を担当できる
- 児童指導員や保育士も両方のサービスを担当できる
ただし、加算請求の面などで、放課後等デイサービスと児童発達支援ではルールが異なることもあるため、運営面で気を付ける点が出てきます。
6. 気をつけるポイント
申請でよくある間違い
スタッフの人数を計算する時の間違いが多いので、特に注意しましょう:
- 働く時間の計算を間違える (例:週40時間働く人を1人分として計算します。週20時間の人は0.5人分になります)
- 必要な資格や経験の確認が不十分 (例:研修の修了証が切れていた、経験年数が足りなかったなど)
設備・備品、平面図についても間違いやすいポイントがあります:
- 手洗い場・トイレ等に備品が置かれていない
- 事務室に置くロッカーが鍵付きではない(※鍵付きが必須です)
- 活動する部屋(発達支援室)の面積が正確に測れていない
- 柱の分の広さを引き忘れる
申請が通るためのポイント
スタッフについて、以下の点をしっかり確認しましょう:
- 資格証明書の有効期限は切れていないか
- 経験年数の証明はきちんとできるか
建物については、以下の点に気を付けましょう:
- お子さんの人数に対して十分な広さがあるか
- 非常口は適切な場所にあるか
開業後にすることとしなければいけない報告
年に1回の報告:
- どんな風に運営しているか
- スタッフがどんな研修を受けたか
- どんなサービスを提供したか
変更があった時の報告:
- 何か変更があった場合は10日以内に報告
- 変更する内容によって必要な書類が違います
- 大きな変更の時は前もって相談しましょう
7. まとめ
それぞれのサービスの特徴
放課後等デイサービスは:
- 学校に通うお子さんが対象
- 学校との連携が大切
- 長期の休みの対応も必要
児童発達支援は:
- まだ学校に入っていないお子さんが対象
- お子さんだけでなく、ご家族の支援も大切
- 発達に合わせた支援が必要
両方のサービスを行う場合は:
- 建物を上手に使える
- スタッフを効率よく配置できる
- ただし、それぞれのサービスの基準は必ず守る
成功のためのポイント
- 早めの相談を心がける
- 遅くとも開業の3ヶ月前までに最初の相談を
- スケジュールに余裕を持つ
- 書類は正確に作る
- チェックリストを使う
- 記入もれがないか確認する
- 必要な書類は全部そろえる
- スタッフは計画的に集める
- 必要な資格を持った人を探す
- 研修の計画を立てる
- 採用の時期を考える
- 建物の基準はしっかり守る
- 広さの基準を満たす
- 必要な設備を用意する
- 安全対策をしっかりする
自力で申請するか、専門家に依頼するか
この放課後等デイサービス、児童発達支援の指定申請は本当に大変です。20年以上、様々な行政書士実務をこなしてきましたが、特に難しい部類に入ります。
正直、一般の方が自分で申請作業を進めることは、おすすめできません。
確かに、①ひとつひとつ書類作成していく→②役所から修正(補正)を受ける→③再提出する、という作業を地道に何回もこなしていけば、自力での申請も無理ではありません。しかし、申請書類の作成に追われすぎて、肝心な開業準備がおろそかになってしまいます。例えば、
・サービス内容を詰める時間が足りない
・利用者集めの活動ができない
といった相談を、これまでたくさん受けてきました。結果として、開設日を迎えても利用者がゼロ、という厳しい状況になってしまうケースもあります。
ですので、もし社内に申請書類を任せられる専門スタッフがいないなら、外部の専門家に相談することをお考えください。弊事務所でなくても構いません。準備に専念できる環境を整えることが、スムーズな事業開始への近道だと考えています。
開業でお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。特に以下の場合はご相談されることをお勧めします
- 建物が基準に合っているか確認したい時
- スタッフの配置について分からない時
- 書類の書き方が分からない時
また、開業した後も、制度や基準が変わっていないか、岐阜県のホームページを見たり、説明会に参加したりして、定期的に確認することをお勧めします。